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2025年のキーワードは、国際化×地方創生。『NEXTOURISM キックオフミーティング 2025』が開催

イベント

2025年6月25日、恵比寿「タイムアウトカフェ&ダイナー」で、一般社団法人 日本地域国際化推進機構の2025年のキックオフミーティング『NEXTOURISM キックオフミーティング 2025』が開催されました。

当機構は、本年で設立から5年の節目を迎えます。キックオフミーティングでは、まず冒頭、代表理事の伏谷博之から今年度の活動方針について説明がありました。続いて、新しく理事に就任した株式会社メタコード 代表取締役の竹中直純氏が紹介されました。そして、國友尚氏、牧野友衛氏、野沢弘樹氏の理事3名からあいさつと近況報告が行われました。加えて、アドバイザリーボードの新メンバーとして、大成建設の前田賢治氏が紹介されました。

観光市場の光と影、訪日観光客4000万人時代到来にも残る構造課題

2025年、訪日観光市場は予想をはるかに上回り、訪日観光客数は4000万人、観光消費額10兆円を大きく超えると言われています。最近では、国際観光旅客税の増額や訪日外国人向けの消費税の免税措置撤廃についての検討がされています。現在1人につき1,000円徴収されているこの税を3,000円、5,000円と引き上げることで、現在(令和7年度)の490億円から2500億円規模へと税収の拡大が見込まれます。また、訪日外国人に対する免税措置の廃止が実現すれば、約2000億円の税収効果も期待されるなど、市場が成長を見せる中、大きな政策予算も手に入る可能性が検討されています。

しかし、一方で根本的な課題が置き去りになっている現状もあります。最も大きな問題は地域格差の拡大でしょう。訪日客の多くが、東京、大阪、京都などの主要都市圏にしか訪問、宿泊しておらず、全国津々浦々に訪日観光の恩恵を届けられていない状況が続いています。さらには、人材不足も深刻化しています。売り手市場で待遇改善が広がる人材市場において、ホテルや飲食、観光の領域では対応が追いついておらず、コロナ禍で離職した人材が戻ってこない状況が続いています。

また、ここ数年は、国を挙げて観光の高付加価値化の推進が行われていますが、真の高付加価値化を実現できる人材や事業者はほとんどいない状況との指摘もあります。世間では、オーバーツーリズムも大きく取り沙汰されています。欧州などの地続きのオーバーツーリズムに比べれば、まだまだその言葉が妥当なのかはわからないですが、一部地域への観光客の集中によって、住民の間に生活の質の悪化に関する懸念が生まれているようです。

2025年度活動方針、『国際化✖️地方創生』を軸としたアップデート

このように、市場の成長の裏側で構造的な課題が解決されないまま存在しています。
当機構は、『国際化✖️地方創生』の文脈を持って、燻っている構造的な課題の解決に貢献して行きたいと考えます。今年度は特に、「国際化推進の強化」「地域ブランディング」「インタープリテーションおよびインタープリター人材育成」「会員連携とネットワーク強化」の4つの領域に注力して行きます。

新理事、竹中直純氏が語る観光課題とインタープリテーションの重要性

ここで、新しく理事となった竹中直純氏は就任挨拶でのメッセージを紹介します。日本の観光における本質的な課題について指摘しています。

「日本の戦後、特に高度成長期あたりで、誤解が生じているように感じます。文化にはアートやリベラルアーツのようなものが不可欠なのですが、小学校、中学校でそういうことをきちんと教わったことがある方って、多分いらっしゃらないと思うのです。アートで例えると、森の中でも山の上でも都会でも、白い壁と天井のホワイトキューブの美術館ばかりが増えて『アートのパッケージ化」が進んだように、日本全国の観光地でもどこでも買える大量生産品が普及し、どこでも同じものが土産として売られた実例がある。それに伴い、観光地がどんどん荒れてしまった。しかし、ローカルで良いもの、そこでしか食べられないものに私たちは惹かれるわけです。きちんと価値あるものを編集し、適切なインタープリテーションが行われれば、そのような白い壁がなくても、大量生産品がなくても、私たちは楽しめます。そして、それが恐らく、日々の生活の中での幸福に直結するのだと思います」。

今、日本に必要な地域ブランディングとは何か

今回のキックオフミーティングでは、昨年よりJR西日本と瀬戸内エリアのリブランディングに取り組んでいる、スペインのマドリードを拠点とするブランドコンサルティング会社、『Saffron Brand Consultants』の共同創業者でCEOのジェイコブ・ベンブナン氏がオンラインで特別講演を行いました。

『BRANDING JAPAN FOR THE WORLD Shaping global relevance through branding』と題して行われた講演は、今、日本に必要な地域ブランディングについて、多数の事例を挙げながら分かりやすく、取り組むべきブランディングの方向性について方法論も含めて指南したもので、大変示唆に富み、学びの多いものとなりました。

鎌倉市の挑戦、オーバーツーリズムの先にある未来

第二部では、鎌倉市政策企画監の馬場晋一氏が「鎌倉の観光とまちづくりの未来」についてプレゼンテーションを行いました。

鎌倉市は今年、『東アジア文化都市』を開催しています。横浜から20分、東京から1時間という好立地、好アクセス、そして、歴史・文化・豊かな自然や観光資源にも恵まれている人口17万人の地域は年間1200万人の観光客が訪れています。

しかしその大半は、日帰り観光客であり、その割合は97%に上る。条例などの制約もあって、宿泊施設が少ないということもありますが、滞在型観光とはほど遠い、まさにオーバーツーリズム型の観光地となってしまっている現状があります。

「要するに日帰り観光だと、パッと見てパッと帰ってしまうわけです。私たちとしてはやはり、おいでいただく方たちにとって、満足度の高い、価値ある滞在体験をしっかり提供して、リピーター化につなげていきたい。『鎌倉っていいよね』と、魅力を感じる場所にしていきたいのです。リピーターになれば、鎌倉というこの魅力的な場所を壊したくないと、地域のことをもっと考えてくれる人が増えると思います」と馬場氏は、体験価値向上とそれに伴うリピーターづくりが鎌倉の観光課題を解決できるのではないかとの考えを示しました。

そして、その取り組みにおいて、重要なのは住民との協働であるとも強調しました。「絶対に鎌倉市民とともに、ユニークな取り組みをしていきたいのです。外から言うのではなく、ちゃんと市民の皆様のご意見をいただきながら、オーバーツーリズムの解決策の一つとして、鎌倉がこれからあるべき姿を発信していけたらと考えています」

鎌倉は、日帰り観光から滞在型観光へと戦略を転換していきたいと語る馬場氏は、そのための具体的な方針として「多様なニーズに対応可能な受け入れ環境を作ること」「ターゲットの再設定」「最適な情報発信戦略」の3点を挙げました。

プレゼンテーションの中でも何度か出てきたキーワードでもある『国際文化観光都市』や住民の声を重視する取り組み姿勢など、鎌倉市のビジョンは、当機構が目指す方向性と非常に親和性が高く、今後も継続的に情報交換、意見交換を行いたいと考えています。

設立から5年、『観光新時代』のあるべき姿に取り組む

さて、当機構は設立から5年目の節目を迎えています。訪日観光は、国の産業としてその規模も含め、非常に存在感の大きな市場を形成するに至っています。しかし、そこには依然としてさまざまな課題が存在しています。

『NEXTOURISM KICK OFF MEETING 2025』では、これらの解決に貢献することが当機構の存在意義でもあることの認識を改めて共有し、3時間に及ぶミーティングを締め括りました。

【開催概要】
NEXTOURISM キックオフミーティング 2025
日時 2025年6月25日(水)18:30 〜 21:30 (二部制)
会場 タイムアウトカフェ&ダイナー
主催 一般社団法人 日本地域国際化推進機構
参加費 会員限定 参加無料

プログラム
第一部(18:30 〜 19:50)
18:30 - 18:40 代表理事挨拶・今年度活動紹介 伏谷博之
18:40 - 18:45 新理事挨拶 竹中直純 
       アドバイザリーボード新メンバー紹介 前田賢治
18:45 - 19:00 理事挨拶  國友尚、牧野友衛、野沢弘樹
19:00 - 19:50 特別講演 ※オンライン
       『今、日本が取り組むべきプレイスブランディング』
        Saffron Brand Consultants CEO兼共同創業者
        ジェイコブ・ベンブナン
第二部(20:00 〜 21:30)
20:00 - 20:20 プレゼンテーション
       『鎌倉、観光とまちづくりの未来』
         鎌倉市政策企画監 馬場晋一
20:30- 交流会
21:30 閉会